レスキュー中のヘリ事故を悼む

昨日は、埼玉県で登山者のレスキュー作業中のヘリが墜落するという胸が痛む事故がありました。
亡くなられた方々にこころからお悔やみ申し上げます。

ヘリコプターの機動力はほんとうに驚くべきものがあります。
北アルプスの山中でいっしょにスキーをしていた友人が足を折り、ヘリコプターによるレスキューを間近にみた経験があります。
好天でほぼ無風、さらにヘリが着陸できるひろい雪原まで事故現場からわずかな距離であったなど、数々の不幸中のさいわいが重なっていました。また、持参していた救急用品が適切だったこともさいわいしました。
あいにくほかの事故が重なっていて、通報から2時間近く現場でヘリを待っていましたが、友人はヘリに収容されてからわずか数十分で病院に到着したことに対し、レスキューに関わってくれた人たちにたいへん感謝していました。
もし、もう少し谷の中に滑り込んでいたところで事故が起こっていたとしたら……
針葉樹林帯の急斜面になっていたので、ヘリでのレスキューは要救護者とレスキューしていただく方々に負担をかけていたことでしょう。

山中深く入って行動する登山、山岳スキー、釣りなどは、いったん事故をおこせば自分たちだけでは八方ふさがりになることが現実にあります。
こうした行為に対してもレスキューをしてくれるシステムというのは、ほんとうに心強く、ありがたい存在。
レスキュー現場で守るべき命の順位として、第1にレスキューをする人、第2にレスキューチームのメンバー、最後に要救護者という厳然としたレスキュー哲学があります。
しかし、ときには思いがけずレスキューをしているひとの命も危うくなるなかで、よくぞレスキューをしてくれるものです。

いっぽう、私たちもまず第一に「事故を予防」し、さらに万一事故をおこしたときに自分たちのちからで当面の危機を回避するセルフレスキューの知識やテクニックを学んでおく必要があります。

団体として行動するときの留意点

今回の事故の発端は、あるパーティ(登山するときの集団。グループ。)のメンバーの滑落事故でした。
滑落の原因が、遭難者自身の力量不足か、またはパーティの総合判断の誤りによるのか、それ以外の要因があるのかは今後の調査でわかることですが、小集団で山中を移動するときに、意外に「こわい」とか「ちょっとムリ」といいにくいムードがある場合があったりします。
実際、気合いを入れてひとがんばりしてもらうことでそのひとの経験値があがることもあります。
しかし、いちかばちかのチャレンジをさせるのは、成功する明確な根拠がない危険な賭けになる場合があります。
万一の場合のバックアップがとれているかどうかは、たいせつな要素です。

同時に、山中では時間との勝負となるときが多いのです。
行程の時間管理をきちんと行って、引き返せない時点=先に進むしか活路が拓けない時点(Point of No return)以後に、メンバーにとって危険な賭けとなってしまう場面が極力でないようにする計画が望まれます。
夕方には自分では大丈夫だと思っていても想像以上に疲労していて、思わぬ判断ミスや行動ミスをしたりする恐れがあります。
一日の温度差や降水のようす、メンバーの疲労の状態などを判断して、いまなら引き返せる(エスケープできる)時点具体的なエスケープの方法(下山、ビバークなど)をつねに意識しながら行動していくことがグループのリーダーならびにひとりひとりの意識に求められます。

そうはいっても、本当に事故は予想しないときに突然起こることもあることは改めて記すまでもありません。
とにかくできる予防策をとっておくことに集中せざるをえないですね。