不条理な子どもたちと歩く「大ツララを訪ねる冬ハイク入門」無事終了!

わずか10分の滞在でしたー。三十槌の氷柱。
なぜそこから登る? 本来の登山道は写真手前側から奥へ。
こんなときにも8mm径15mほどの補助ロープは大助かり。
後ろを守るお母さんの手にぐるぐる巻きになってますがw
「きれいだなあー」とはいっても……
左側はどんと落ちているのでゼッタイ気を抜けないところ。
こういう橋、いやらしい。
でも、右側を巻いていけるのです。なぜ渡る? 
なぜ不安定な雪がつく橋の上でにこやかに片足を挙げる?
滑りやすいところをせっかく無事通過したのに、なぜ戻る?
1/25(日)、好天に恵まれて13名のご参加者(うち年中から小5までのお子さん7名)と2名のスタッフあわせて15名にて、秩父往還の旧道を歩いて三十槌の氷柱を目指す「大ツララを訪ねる冬ハイク入門」が無事終了しました。

当然ですが、山道は雪が降ったり、凍ったりするといっそう不安定になります。
そうした状態で山道を歩くことは経験値を増してくれますし、比較的安価で(千円台からお求めいただけるくらい)軽量で、脱着が楽な滑り止めの効果を体感しておくことで、こうした装備をこの時期の山歩きに常備していただく大きな動機づけにすることを目的として本活動を実施しました。

この週は週のなかばでいったん天気が崩れたので、本番2日前に最終下見をしていましたが、当日は下見時よりも雪が溶けて少なくなっていたものの、いったん溶けた雪が凍結して、この日の最高到達点だった杉ノ峠からの下り道は下見時よりも悪くなっていました。

そうした条件でしたが、子どもたちは大人からみるとまさに「不条理」と思えるくらいに「より悪い条件」を求めて山中を歩いていました。

たとえば、わざといやらしい斜面を攀じ登る。
巻道を提案しても、わざといやらしい橋を渡る。
せっかく通過した滑りやすい場所を、もう一度戻って歩き直す、など。

大人の目から見ると、主催者の私でさえ「なぜ?」と思うような、一見「ムダで不条理な行動」をするのですが、子どもたちにとって(ジツは、私たちオトナにとってさえ!)「できるかできないかわからないが、おそらくできるだろう」と踏んでいる小試行の積み重ねは「思考と行動」の擦り合わせとして避けて通れない大切な過程なのだと思います。

もちろん主催者としては不安ですが、じつはこころのどこかで楽しんでいるところもあります。
「あの子が、へえ、こんなこともするようになったんだ」と、見ていて感心したりもします。

こうした場面において、あるお母さんの言葉がいつも私の頭の中にあります。
あやうい行動を求める自分の子を見ながら
「ああ、私はもう○○君がはじめからいなかったと思うようにしよう」と。
この諦観に、子と親の関係の真理が潜んでいるように思うからです。

社会通念的に考えて、自然体験活動の主催者がどれくらいのリスクを引率した子どもたちに許容するか、は、いざ本当に事故が起きたときの社会からの譴責に深く関係します。
おそらく、最近の自分の許容程度は、なにかあったときにバッシングを受ける程度になっている気がします。
もちろん、子どもたちがヘマをしたら死んだり、一生後悔するような「無謀なこと」を許容するわけにはいきませんが、子どもたちは意外にそうしたボーダーラインを自ら理解しています。そのボーダーラインを適切にひけるかどうかも、子どもたち自身に選択と実行の実体験がなければむずかしい。

私たちはできる限り行動に選択肢を与えるようにしています。
「こっちに来ればより安全でっせ」という選択肢です。
でも、こうした選択肢も、ゆくゆくは子どもたち自分で見つけ出さなくてはなりません。
高いところに架かる一本橋が目の前にあったとします。
この橋をどうしても渡らなくてはならないのか、巻道はないのか。
本当に一歩間違えると死ぬ恐れがあるような橋ならば、巻道がなければ戻ることも選択肢に入れなくてはなりません。
こうした選択をできるようになるためには、ときどきタンコブを作ったり、切り傷を負ったりするくらいは自らに課していくことが、私たちは望ましいと信じています。

こうした選択はなにも自然のなかだけにあるわけではありません。
これから商売をはじめる子どもたち、勤めて営業や研究開発に携わる子どもたち、スポーツや芸術の分野を目指す子どもたちなどなど、だれもが実社会で「選択し、行動する」主体性と責任を負っていく立場を求められたときにこそ、生きてくる経験なんです。

おっと、長くなってしまいました。
そんなこんなで(なんというハショリ方!)みんなが目指した三十槌のツララにいた時間はわずか10分程度、みなさん温泉も入らずに帰途に就きましたとさ。
もちろん、ご自身たちの選択において、ですよ。
その意味で、この活動にご参加いただいたみなさんは、所期の目的を十分達成しました。

後日ご参加いただいたお母様たちからメールをいただきました。
日曜日はとても良いお天気の中、氷柱ハイクに参加させて頂きありがとうございました。
親子でとても楽しい一日を過ごすことが出来ました。
子供達は氷柱より雪道が楽しかったようで帰ってからも「やっぱり野外塾で行く自然は楽しいなぁ」としんみりと語っていました。
写真を見て、改めて「こんなとこ、幼児がよく歩いたよなぁ。。」と思いました。目的や目標を理解し、そしてホントに好きじゃないと歩けないな、と。
それに、面倒見の良いお兄さんお姉さんお母さんに囲まれ・・無かった(笑)事が、彼にとっては良かった気がします。諸事フォローありがとうございました。

個人的にはアイゼンで凍った雪を踏む感覚が好みでした。雪や冬山は怖いイメージがありましたが、路面の変化が面白かったです。
息子も、翌週の31日のツララハイクも行きたい、と言ってるくらい楽しかったようです。

後日お一人でご参加いただいたお姉様からもメールをいただきました。
「大ツララを訪ねる冬ハイク入門」では元気な子どもたちと一緒に山登りができて、とても楽しかったです。
たくさんの元気をいただきました。
Webアルバムに掲載していただいた写真を見ながら、」子どもたちみんなよく頑張って登ったな〜」と、大ツララは見応えがあったと感じました。

ほんとうにお疲れさまでした。そしてありがとうございました!