【野外塾+】参加者のチャレンジを支える下見

 2021年松の内は、従来は共有に意味がないと思っていた運営の雑事情を「野外塾+(プラス)」と題して事実ベースでつづります。
2日目は下見について私たちの考えを共有します。

新しい沢の候補地でも、いつもの沢でも、子どもが泳ぎたがる淵は綿密に調べます。

はじめて訪ねる新しい活動候補地はもちろん、いつもの場所も時間の経過とともに人知れず自然のようすは変わって、自然の魅力の中に事故因子が潜んでいると考えるべきです。
多くの命を預かる活動本番に先立って行う下見は、主催者が活動当日に参加者と共有できる多くの情報を得るための絶好のチャンス。
そんな下見で私たちが大切にしているのは下見の時期と、先入観をなくした目線です。

たとえば沢の下見なら、下見時と実施時の様相の差がなくなるよう、下見時期は沢の様相が一変する恐れがある梅雨が明けてから。
前年に遊んだ淵も妄信せず、潜って目視と撮影で確認して事故因子の有無を調べます。
山中でももちろん、大きな台風が通過したあとは崩落箇所の有無などを確認するのは当然ですし、積雪地での活動ならば下見は雪が積もってからです。

はじめて活動しようとしている活動候補地ではわかりにくい分岐や難しい箇所を下見で解決しておいて、なにが事故因子になるかを確認することと、ポイントとなる箇所では脱出経路を探したり、子どもが興味をもちやすいもの、たとえば倒木や巨石があれば、実際にそこで子供のように遊んでみたりします。遊び場として足場や不安定さが許容できるかどうかを見ておくと当日の対応を適切にできます。

実際の活動では主催者が思いもよらない子どもたちの遊び方が出現するものです。
子どもたちにとって成長チャンスとなる一瞬なので、私たちの判断と対処の真価が問われる時であり、参加者へチャレンジを促す主催者側にもチャレンジが求められる場面でもあります。
下見でその場の事故因子の有無とその危険性を確認できているから、アドリブ的なチャレンジをサポートするケースでは要注意のポイントを絞れます。
チャレンジと下見は相反するようですが、下見してるからこそチャレンジで生じる未知のリスクに対して集中的にサポートできるので、下見はチャレンジの下支えといえます。

下見中は事故因子を網羅的に洗い出すことに腐心せず、実施時に判断材料が短時間に整理できて最適な判断と対処ができるような最重要因子を見逃さないように注意しています。

いっぽう、下見をしない(できない)活動もあります。
2012年3月、テント泊装備で約200kmの沖縄本島サイクリング。
下見がないから翌日の行程ミーティングはとても大切。
春休みに行うロングキャンプ(6泊程度)は、往復の行程だけ決めておいて、現地入りしてから参加者らのミーティングで日々行程を決める方法を採ることがあります。
この方法は、参加者の安全対処における基礎力がそろっていることを前提に下見をしないで実施します。
子どもたちが大きくなってから友だちと一緒に、あるいはひとりでどこかに初めていくときに下見はしないはずですから、そのときの予行練習となるように進行します。

下見の有無、下見の内容は、どんな自然体験活動の団体でもその理念を反映しているといえます。
活動計画の前はこんなことが考えられているんだな、というご理解の一助としていただければ本望です。